スマホやPCでプロ講師の授業が見放題のスタディサプリ、通称「スタサプ」。月額980円という安い値段だし、全教科がこれだけで勉強できるということで、かなり魅力的なサービスに見えます。
で、この記事で言いたいのは、「不登校の中学生・高校生にとってスタディサプリってどうなの?」ってこと。
学校で授業を受けてないなら、スタサプで補うのは効果的……とも思えますが、これは真実なのか? 不登校の観点から、どういうメリット・デメリットがあるのか? 元塾講師の観点からお伝えします。
目次
スタディサプリの基本情報
基本的な特徴はこの通り。

全国トップレベルの講師陣による「神授業」が見放題で、範囲も小4から高3の大学受験レベルまでと、ほぼ全範囲を網羅しています。
さらに、ひとつの学年・教科につき1種類の授業というだけでなく、
- 基礎
- 応用
- 教科書別
- 定期テスト用
- 受験対策
といくつもの授業がラインナップされています(学年・教科による)。使い始めは「どんだけあんの?」と目が白黒してしまうほど種類が豊富です。
しかも、スタディサプリは動画講義だけでなく、それぞれ専用のテキストも用意されていて、それもダウンロードし放題。単純に、良質な問題をゲットするだけの用途でも活躍してくれるでしょう。
利用できる端末はパソコン・iPad・スマホ。なので、家でも外出先でも、電車の中でも勉強できます。
これだけ強力なサービスで、値段は月額980円(税抜)。月3万とか4万かかる学習塾・予備校・家庭教師の業界も真っ青の、価格破壊的サービスとなっています。
普通に登校してる生徒にはスタディサプリはおすすめ
スタディサプリは、学校に通っている中学生や高校生にとって、かなりありがたい学習ツールなのは本当なのです。その理由を3つにしぼってお伝えします。
理由1:授業のクオリティーが高い
スタディーサプリの授業は全国屈指のプロ講師によるものなので、クオリティーが非常に高い。
学校の授業ではちょっと分かりにくい、もしくはもっと高度な授業を受けたいという自発的な生徒にとっては、スタディサプリは大活躍してくれます。なにしろ、予備校が元になっている教材アプリですから。
理由2:進度が自由
スタディサプリは小4から高3までの範囲をカバーしていて、難易度もいろいろ。なので、学習を進めるスピードは一人ひとり自由です。
中学生が小学校に範囲に戻るもよし、中学生が高校の内容を先取りするもよし。
これも学校には期待できないメリットです。
理由3:書いて覚えられる
スタディサプリはいかにもスマホで動画を見るだけのイメージが強いかもしれませんが、実際には紙のテキストをダウンロードし、自分で考え、書きながら覚えるプロセスも重視されています。
授業動画の途中、先生が、
「はい、ここで止めて問題を解いてみましょう」
と指示してくれるので、その通りやっていけばリアルな授業を受けているのとほぼ同じです。

以上が、スタディサプリのよいポイントでした。
【危険】スタディサプリは8割の不登校生にお勧めできない
さて、ここからが本題です。
スタディサプリは基本的にいい教材なのですが、生徒を教えていた身からすると、ほとんどの不登校生におすすめできません。
これを分かってないと時間を無駄にしたり他の学習機会を失ったりするリスクもある。これも、3つのポイントでお伝えします。
理由1:質問できない
第一に、スタディサプリの通常プランには質問対応のサービスがない。これが残念な点です。月額980円なので仕方ないですが。
不登校のお子さんが自力で勉強しようと思ったら、やっぱり質問できる相手というのは必要です。そこをスタディサプリでは補えません。
たとえば、大人であっても初めて勉強する分野について動画教材だけポンと渡されたらどうでしょう? それで継続的に学習し、身につける自信があるでしょうか? ほとんどの人にとっては難しいはずです。子供ならなおさら。
導いてくれたり、質問・相談を受け付けていないスタディサプリでは、十分な学習効果は望めません。
理由2:学習管理がおおざっぱ
スタディサプリでは、保護者も生徒さんの学習履歴を見ることができます。

チェックできるのは講座名・視聴時間・回数・正答率など。
しかし、「この範囲の問題を間違えたよ!」という細かい情報は出ませんし、苦手な部分に応じたチャプターへ飛べるというわけでもないので、かなり微妙です。
ただ聞き流してるだけでも「視聴時間」としてカウントされてしまうので、親御さんによる管理には不向きです。
理由3:不登校状態で使いこなすのは困難
そもそもですが、スタディサプリは不登校対応をコンセプトとした教材ではありません。公式サイトを見てみるとわかりますが、基本的には定期テストの点数アップ、難関高校・大学への合格をめざすための教材です。つまり、塾や予備校の「アプリ版」なのです。
なので、不登校の子が基礎学力を養成するのに最適かというと……全然、違う。
むしろ、ある程度「できる子」が、学校の授業では飽き足らず、自発的にもっと家で勉強する。そういう使い方の方が合っているでしょう。自律的に勉強できる子向けですね。
授業を動画で見て学習するための基礎力がないのにスタディサプリだけ使おうとすると、よく分からないまま動画視聴で時間を潰すということになりかねません。
そうなると「勉強してるはずなのに成績が上がらない」ということもありえるし、もっと適切な学習法・教材があるのにそれを利用するチャンスを逃してしまうかもしれません。
だから、積極的にスタディサプリを不登校の子に勧める気にはならないのです。
スタディサプリなら不登校でも「出席扱い」になるのか?
不登校をめぐる問題について詳しい方なら、こう考えるかもしれません。
「スタディサプリで家庭学習をすれば、学校も出席扱いになるんじゃないか?」
というのも、IT教材による学習でも「出席扱い」を認めようという文部科学省の通知が出ているからです。
我が国の義務教育制度を前提としつつ,一定の要件を満たした上で,自宅において教育委員会,学校,学校外の公的機関又は民間事業者が提供するIT等を活用した学習活動を行った場合,校長は,指導要録上出席扱いとすること及びその成果を評価に反映することができることとする。
不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について(通知):文部科学省
これを見ると、スタディサプリという「IT教材」で勉強すれば出席扱いにしてもらえそうな気もします。
ただし、これにはいくつかの条件があります。個別の詳しい条件はこちらの記事(日本のホームスクーリングの現状と、あと、すごいIT教材を紹介します【文部科学大臣賞受賞】)を読んでいただきたいのですが、最大の気がかりはここ。
スタディサプリで「出席扱い」になった前例が見当たらない!
先ほども引き合いに出した「すらら」なら出席扱いになった実績があるのですが、スタディサプリではそういう事例が見当たりません。公式サイトでも紹介されていません。
「出席扱いになる」と書いてるブログもありますが、制度上不可能ではないというだけで、経験談とか実績としては何も紹介されてないんです。スタディサプリ側は文科省の言葉を捉えて「出席扱いに(原理的には)なる」というのを売り文句にしていますし、紹介する人もそれをそのまま繰り返している。けれど、そこには現実的な視点が感じられません。
学校もお役所であり、お役所と言えば前例主義。そんな中でスタディサプリを使って出席扱いを勝ち取るにはけっこうな労力と時間が必要になると予測されます。現実的にはあまりおすすめできない方法です。
まとめ|不登校生にスタディサプリはNG
不登校生にスタディサプリはおすすめなのか、そうでないのか? まとめるとこうです。
自分で計画を立てて勉強していける子にはおすすめだけど、不登校で基礎が怪しい子の土台作りには向かない、です。
たとえば中学生で、学校の授業が退屈なくらい簡単。学校へ行くのがバカらしい。こういう子はスタディサプリでがんがん先取りして勉強していくといいと思います。でもこんな子が何%いるでしょうか。
そもそも小中学校の基礎が怪しい生徒や、自分で学習管理ができない子にはスタディサプリは向きません。ペースメーカーとなるものがない不登校の子にも向きません。
もし不登校のお子さんの学習教材として通信教材を検討するなら、すららをおすすめしています。それについてはこちらの記事をご覧ください。