小中学校で不登校を経験した人、あるいはその保護者なら、迷うのが高校選びでしょう。

「普通に全日制の高校に行って、みんなと同じ学校生活を送って欲しい」

と、こう思う親御さんも多いかもしれません。

しかし、いまイチオシなのは通信制高校です。自分のペースで通えて、好きな勉強もでき、高校卒業資格もちゃんと取れる。これほどいいものはない。この記事では通信制高校が不登校経験者におすすめのわけをお伝えします。

通信制高校の仕組み|全日制と比較して

通信制高校なら自分のペースで歩いていける

学校に嫌気がさし、中退したいと思っていた高校時代、もし通信制高校を知っていれば確実に転入をめざしていました。通信制高校には、通常の全日制高校にはないよさがあります。

いまや、高校生の20人に1人は通信制です。一般的な学び方として広まってきています。

では、通信制高校にはどんな特色があるのか? 全日制と比較しつつ3つのポイントでお伝えします。

1:登校日数が自由に選べる

全日制高校は週5日も登校しなければなりません。長期休暇をのぞき、年間200日ほども通わなければいけない。

一方で、通信制高校なら年間20日の通学で済みます。なんと10分の1。しかも、インターネットやDVD、NHKテレビの映像授業を見てレポートを提出すれば、もっと減らせる。

不登校の定義は「年間30日以上の欠席」ですから、通信制高校には不登校の概念そのものが存在しないことになります。年間20日の出席でいいんだから。

しかも、「20日しか出席できない」わけではなく、多くの通信制高校では——特に私立では——週1〜5日の通学コースも用意されています。学校で勉強したい、毎日友達に会いたいという人には、そういう選択肢もある。それほど、通信制高校は自由なのです。

通信制高校へ進学する子の6割は不登校経験者。進路としてぴったりです。

2:単位制だから自分のペースで学べる

普通の全日制高校は学年制で、通信制高校は単位制です。卒業・進級の仕組みがまったくちがいます。

学年制とは、これは経験者が多いのでわかると思いますが、1年生から1年ずつ上がっていくスタイル。で、問題は、1教科でもだめだと留年させられて、まったく同じ学年をやらされるということ。留年(正式には原級措置)というやつです。

学年制でも実は「単位」という考え方はあるんですが、1つの単位でも落としてしまうと上の学年に上がれないという不合理な仕組みなのです。当たり前に受け入れてるけど、非常に効率が悪い。

一方、通信制は3年間(4、5年でもいい)で74単位取ればよく、毎年の取得単位も自由に設定できる。1つの単位を落としたら、翌年それだけを再履修すればいい。とても合理的で効率的です。

単位の取得にはレポート・スクーリング・テストが必要ですが、計画立ててやれば全日制よりだいぶ時間も労力も少なくて済みます。

3:勉強以外の好きなこともできる

最近、自民党の教育再生実行本部というところがこう言って高校の改革を求めています。

偏差値で輪切りされ、大学入試に困らない指導をするあまり、生徒の能力や個性を伸ばせず、学習意欲が低下している

まさにその通り。自民党への支持・不支持はありましょうが、この指摘にはうなずく人が多いのではないでしょうか。

実際、全日制高校の普通科は3年間もかけてだらだらと受験対策みたいなことをしており、教育機関として独自の役割を果たせていません。完全に形骸化しており、全国の少年少女の青春を無駄にしています。

一方、通信制高校ならいわゆる5教科のお勉強はそれなりに済ますことができ、他の時間には好きなことができます。プログラミング、芸術、文芸、スポーツなどに打ち込むこともできる。大手予備校を利用して難関大学をめざしてもいい。アルバイトに精を出して社会経験を積んでもいい。なんなら起業したっていい。

10代のうちから自由に好きなことに時間を使える。これこそ、本当の意味で「生きる力」をつけられる学校と言えましょう。

また、通信制高校には「偏差値」とか「難易度ランキング」といったくだらないものもありません。これもまたいいところです。

通信制高校の卒業率は低いのか?

通信制でも全日制でも「高校卒業」資格は同じ

自由でマイペースで好きなことができる通信制高校。しかし、一方で「ちゃんと卒業できるのか?」という心配もあるでしょう。

最近は「学歴なんて関係ない」という風潮がつよまっていますが、これは「難関大学を出る必要はない」という意味で言われることが多く、さすがに高卒資格はあった方がいい。私もそう思います。

けど、通学日が少ないのをいいことに、家にこもってゲームばかりし、あるいは悪友と遊び呆けて気づいたら中途退学……なんてリスクもないわけじゃありません。

通信制高校の中退率は4.9%

まずデータを見てみましょう。

文科省データによると、平成29(2017)年はこう。

  • 全日制の中退率0.9%
  • 通信制の中退率4.9%

出典:平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について:文部科学省 p.118

たしかに、通信制は中退者が多い。統計的に考えると通信制の方が「卒業しにくい」とは言えそうです。

しかし、公立か私立でも違うし、私立通信制高校も千差万別、また、サポート校を利用したかどうかでもこの数値は大きくちがってくるでしょう。学校によっては卒業率の高いところもあるので、そういったところに注目するといいかも。

サポート校を活用しよう

通信制高校は家庭学習とレポート提出がメイン。となると、自分で計画を立てて学習できない生徒は途中で挫折してしまいます。

進研ゼミのような通信教材や、あるいは通信教育による資格取得を考えれば、続けることの難しさは想像にかたくありません。

そこで活躍してくれるのがサポート校です。

これは正規の「学校」ではありませんが、通信制高校を卒業するためのさまざまな手助けをしてくれます

中学までの内容の復習だったり、レポート作成のための補習授業だったり、あるいは生活面やメンタルのサポートも。確実に卒業するためにはこのサポート校の活用もキーになるでしょう。

15年遅く生まれていれば……

埼玉県立熊谷西高校
もはや存在意義が分からない普通科全日制高校

私が不登校の高校生だった頃、こう考えていました。

「学校を中退したい。でも、そしたらフリーターをしつつ大検を取って進学しなければ」

親はこう言っていました。

「高校を中退したら、そこらの不良のお兄ちゃんといっしょになっちゃうよ」

なんと偏狭な、と思いますが、2000年当時の一般的な認識はこの程度のものでした。

もし高校を中退すればフリーターへと転落してしまい、あとは自力で大検(大学入学資格検定)を取って進学するしかない。そう思っていました。

しかし、そのあと通信制の高校がかなり増えてきました。

  • 2000年の通信制高校:113校
  • 2017年の通信制高校:251校

倍以上になっています。公立校は69校から78校へとさほど変わりませんが、私立だと44校から173校へと激増しています。それだけ選択肢が増えたのです。

また、最近は角川ドワンゴのN高が社会的に注目され、「通信制高校=不登校の受け皿」というイメージから「通信制高校=好きなことに夢中になれる学校」というポジティブなものに変わってきています。

私は無理をして高校を卒業してしまい、そのあと大学と大学院まで出ましたが、今、多くの選択肢がある高校生たちが心底うらやましい。今からでも入学して、高校生活をやり直したいくらいです。

あと15年ほど遅く生まれていればと、本当にそう思います。

まとめ|通信制高校が10代の教育を変える

通信制高校は全日制高校とは違い、通学日数を選べたり好きなことを10代のうちから学べるすてきな学校です。もしいま学校に適応できない中学生がいれば、あるいは全日制高校でうまくいっていない高校生がいれば、ぜひ検討してみてもらいたい。

高2、高3で転入したとしても、これまでの単位取得状況によっては、18歳で他の生徒といっしょに卒業することも可能です。

不登校の受け入れ先、本来の輝く場所として、通信制高校がある。だから、いま不登校でも何の問題もありません。不登校イッツオールライト。もう無理してまで学校に行く必要も、行かせる必要もないのです。