「子供が学校に行かなくなった。どうすればいいの?」
「息子(娘)が不登校になったのは育て方に問題があったから?」
「将来のためにも、何とかしてまた学校に通わせなきゃ」

このような悩みや焦燥感を覚えてはいませんか? しかし、それは余計な心配です。不登校が「解決すべき問題」だったのは過去の話。今はもう、子供を無理して学校に通わせる必要などありません。

この記事では、元不登校だった私から、学校に行く必要がない理由をお伝えします。

不登校を解決しようとして消耗していませんか

ちょっと前まで元気に学校に通っていたわが子が学校に行かなく(行けなく)なった。こんなとき、お父さんお母さんは焦るでしょう。いったい何が原因なのか、どうすればまた学校へ行ってくれるのか、不登校のままだとどうなっちゃうのか?

そうして始まる、朝の押し問答。

「今日は行くの? 行かないの?」

穏やかな口調だったのが、気づけば感情爆発の口喧嘩へと発展し、やがて目覚まし時計が飛んできて、ローンの残る家の壁に穴が空く。いつしか親子のあいだにはすっかり溝ができ、対立が先鋭化して、一家全員が疲弊する消耗戦へと突入——。

非常に無益なことです。

ちなみに現在、不登校はまったく珍しい現象ではありません。文科省の発表によれば、2017年には14万人の中学生が不登校とのこと。およそ30人に一人です。また、保健室登校の子や不登校傾向の子まで含めれば約43万人の中学生がまともに学校に行っていないのです。

参考:不登校傾向にある子どもの実態調査|日本財団

それでもなお残る、「不登校をなんとかしなきゃ」という義務感。そこから生じる子供への登校強要。子供のためを思ってのことではありましょうが、そこに軋轢が生じて親子ともども疲弊するくらいなら、学校なんて、無理に行かせる必要はないのです。

以下、その5つの理由をお伝えします。

子供を学校に行かせなくていい5つの理由

今この時代、子供が学校に行きたくないなら、無理をしてまで行かせる必要はない。私がそう考える5つの理由がこちらです。

理由1:学校教育が時代遅れになっているから

そもそも学校は、その仕組みも体質も、圧倒的に時代遅れになっています。

明治5(1872)年に「学制」が発布され、それから長い間、日本の教育はうまく機能していました。富国強兵と殖産興業に寄与し、戦後は均一で一定レベル以上の能力を持ったサラリーマン人材を養成し、これが経済発展を可能にした。

しかし、この長く続いた「成功体験」が、今や足枷になっています。

なまじうまく行っていただけにその仕組みも体質も変えられず、時代錯誤の教育がいまだに続けられています。現代はまさに、本格的な個性の時代。尖った個性こそが光り輝く時代。なのに、学校教育はいまだ、均一で集団行動をよしとする昭和の価値観を引きずっています。

果たして、そんな教育機関に子供を「適応」させてしまっていいのでしょうか。私はそうは思いません。学校への「適応」は、やがて実社会への「不適応」さえ引き起こしかねないのですから

理由2:親子で疲弊してしまうから

子供が不登校になると、往々にして生じるのが「学校へ行け」「行かない」という親子の押し問答。水面下の心理バトル。この対立が長引きますと、子供も親も消耗します。

そもそも、不登校の原因は多くの場合ではっきりしません。不登校にとどまってしまう理由の1位は「無気力でなんとなく」(44.4%)、2位は「身体の調子が悪いと感じたりぼんやりした不安があるから」(43.7%)。つまり、本人にだって「これ」という理由がわからない。だから、特定の問題を合理的に解決していざまた学校へ、という流れにはならないのです。

そうなると子供本人も精神的に疲弊してくるし、最初は寛容だった親も迷路をさまよう感覚となって疲れてくる。そうして深い対立、心理的な溝が生まれ、やがて不信感と諦めが家の中を漂うようになってしまう。

こうなってはもはや不登校だけの問題ではありません。それを口火に、家庭の不和にまで発展してしまう。これはとても哀しいことです。

理由3:学校は勉強の効率が悪いから

今の学校の大きな問題、それは学力が中間の子に合わせた授業になっていて、上と下のケアができていないこと、です。

塾講師をしていた経験上わかるのですが、集団授業では中間の子たちに合わせます。そこのボリュームが多いからです。と、よくできる子は退屈と感じ、できない子は置いてけぼりとなってしまいます。

「落ちこぼれ」と「吹きこぼれ」などと言いますが、クラスの中のかなりの子が不満を感じながら授業を受けていることになる。つまり、勉強をするという目的からすると、学校の集団授業は効率がわるいのです。

もちろん、とりわけ気の毒なのは学力の低い子供たちです。彼らは毎日毎日、何年間も、聞いてもわからない授業を受けに学校へ行かされているのです。想像するだけで絶望的な気分になりませんか? 学習塾なら下のクラスに移ったり個別指導に切り替えたりできますが、学校ではそれもできません。ちなみに、不登校になったきっかけ第3位は「勉強が分からない」(31.2%)となっています。

私の知っているある女の子はこう言いました。「学校に行くと勉強ができない」と。彼女の中学校は学級崩壊に近い状態にあったようです。その後、進学した高校もすぐ中退。しかし、やがて大学へ入って、なんと難関の薬剤師試験に合格しました。勉強なら学校以外でもできるのです。

理由4:学校に行かせるのは義務ではないから

小中学校は義務教育だから、通うのは子供の義務? ——いえいえ、違います。子供は教育を受ける権利を持っているのであって、それは義務ではありません。では、親が子供を通わせるのが義務? いいえ、実は、これも正確ではありません。

義務教育という言葉は日本国憲法や教育基本法、学校教育法で使われていますが、つまりは子供に最低限必要な教育を授けなさいよ、という趣旨です。行政・地域・保護者が子供に適切な教育機会を確保してあげること。これが本質なのです。

なので、義務教育だから学校に行かなければいけないとか、行かせないといけないことはないのです。

これは私が勝手に言っているわけではなく、文科省も平成28(2016)年に次のような通知を出しました。

不登校とは,多様な要因・背景により,結果として不登校状態になっているということであり,その行為を「問題行動」と判断してはならない

不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。

出典:不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)|文科省(強調は筆者による)

つまり、教育行政を司る文科省も、不登校に対して「学校に戻すだけを目標にするなよ」と、「しばらく休むことも大切だよ」と認めている。学校に行くことも行かせることも、義務ではないのです。

理由5:出席しなくても卒業できるから

長期の不登校となると、もしかしたら「卒業できないかも」と心配になる親御さんもいらっしゃるかもしれません。杞憂です。また、学校の教師の中には「このままだと卒業できませんよ」と言う人もいるかも。しかし、これはただの脅しです。

小学校・中学校は、入学さえすれば1日も出席しなくても卒業できます。

『男はつらいよ』の主人公・寅さんは中学校中退という設定で、かつては実際にそういうこともありえたそうです。ですが、現在では必ず卒業できます。というのも、小中学校の卒業は校長の裁量次第となっており、出席日数も成績も卒業要件にはなっていないからです。

ややこしくなるので法律上の規定には立ち入りませんが、とにかく大丈夫。卒業できます。

また、高校の場合は単位取得が必要となるので不登校だと中退となってしまいますが、それでも通信制高校への転入・編入や高校卒業程度認定試験(高認)があるため、いくらでもリカバリーは可能です。

学校に行かない場合にすべき2つのこと

ちょっと補足しておきますと、私は「学校に行かない方がいい」とまでは思いません。子供にとって学校が居心地よく、勉強にも支障がないなら、行けばいいと思います。

しかし、精神に不調をきたしたり、いじめにあったり、人間関係の摩擦で傷ついたりするくらいなら、無理に行く必要はないと思うのです。

はて、では学校に行かない(強いて行かせない)という選択をした場合、どうすればいいのか? 一つだめな例としては「ただ待つ」という行動です。不登校期間を休息として捉え、また学校に行けるようになるのを待つ。ひたすら待つだけ。これはいただけません。そのあいだにも学校の勉強は進んで行ってしまいますから。

その1:基礎学力の養成

もし学校に行かないのなら、そのあいだは別の手段を使って基礎学力だけは養っておくべきです。本来の意味での「教育の義務」は果たさなければいけません。そのために、たとえばこんな方法があります。

  • 親が勉強を教える
  • 教育支援センター(適応指導教室)に通う
  • フリースクールに通う
  • 塾・家庭教師・通信教材で学習する

ひと昔前に比べ、今は教育に関しても代替手段が充実しています。こういったものを活用し、一定レベルの学力は養成しておきましょう。

いくら「だれでも卒業できる」と言っても、実質的な学力がないとそのあとが困ります。高校入学にも編入にも、その後の進学にも、あるいは就職にも、学力を試される機会は多い。何より、基礎的な知識・読解力・思考力がないと、この先の社会を渡っていくことが難しくなります。何はなくとも、学力の養成は必須です。

その2:コミュニティへの所属

それからもう一つ、何かしらのコミュニティに所属することをおすすめします。

元不登校の方の体験談を読んでいますと、学校と家庭以外のコミュニティに繋がったことでいい影響を受けたという例が多いのです。たとえば、「不登校から高校生社長へ」の運営者でイベンターの小幡和輝さんは小2から中3までの10年間不登校でした。が、適応指導教室に通ったり、好きなゲーム仲間と交流したりして、そこから社会へと繋がっていきました。

不登校といっても学校以外でいろいろな人と話をしていた僕は、コミュニケーションがそんなに苦にはならなかった。

イベントを企画することへのハードルが低かったのは、ゲーム専門店で大会を運営することが多く、いつもの延長線上という感じがあったからだと思う。とにかく、学校以外にコミュニティ(=居場所)があったことは、本当によかったと思っている。

引用:小幡和輝『学校は行かなくてもいい ――親子で読みたい「正しい不登校のやり方」』エッセンシャル出版社

習い事、学習塾、趣味の集まりなど、「居場所」となるコミュニティの存在は大切です。これからは好きなことの追求こそが価値となる時代。ぜひ、コミュニティに所属するようにしてください。

まとめ

今の時代、もはや無理をしてまで子供を学校に行かせる必要はありません。登校するかしないかは、ただの適性の問題。不登校となったら、そこから別の選択肢が見えてくるだけのことです。

大事なのは、いま学校に行くかどうかではなく、将来どう生きるかということ。充実した人生を歩めるようにするため、学力の養成とコミュニティを通じた人間関係の構築をめざしましょう。