自分の息子・娘が中学で不登校になっちゃった。となると、今日あした学校へ行ってくれるのかどうかも気がかりですが、長期化すれば「その後の人生」にも不安を覚えるでしょう。

「高校でも不登校になってしまうんじゃないか」
「その先、大人になってやっていけるのか」

心配は尽きないと思いますが、この記事ではかつて不登校だった中学生の20歳時点での状況をわかりやすいグラフとデータでお伝えします。

不登校だった中学生のその後をデータで見る

平成18(2006)年に不登校だった中学3年生が、その後どんな経過をたどったのか? 彼らが20歳となった平成23(2011)年10月から翌年にかけて行われた文科省の調査結果があります。

「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~

対象者は元不登校生徒およそ4万1000人と大規模。不登校の予後を知るにはもっとも信頼できるデータだと言えるでしょう。

主にこのデータの中から気になる4つのポイントをお伝えします(グラフは私が作成)。

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高校進学率は85%

中学校卒業後の進路
出典:「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)(p.34-38)

「高校進学(のみ)」と「働きつつ高校進学」を合わせ、高校進学率は85%です。2006年時点の高校進学率が97.7%であることを考えると、やはり低いのは確か。

不登校のまま中学校の学籍がなくなってしまうと、そのまま就職も進学もできないリスクが高まるのでしょう。

ただし、これは中学卒業時の進路である点に注意。進学も就職もしなかったとの回答は134件ですが、後に41人は高校進学、26人は就職となっています。

55%が働いていて、48%が学校へ

20歳時点での就学就業状況
出典:「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)(p.144)

ざっくりした状況がこれ。55%が何かしらの仕事をし、48%が学校に通っています(「仕事のみ」「学校のみ」に両方兼ねている割合を足した数字)。それぞれ、もう少し詳しくご紹介します。パーセンテージは全体における割合です。

就業状況:非正規で働く人が最多

正社員9.6%
家業手伝い・会社経営3.5%
パート・アルバイト33.1%
その他8.7%
仕事にはついていない45.1%

いわゆる非正規での就業が全体の3分の1と多くなっています。ここが多いのは、学生をしつつバイトをしている子も含まれるからでしょう。また、「仕事にはついていない」が45.1%と多いですが、この中にはバイトなどをしていない学生も含まれます。

就学状況:5割弱が学生

高校9.3%
専門学校・各種学校など15.3%
大学・短大・高専23.4%
上記学校には通っていない51.9%

調査時点での対象者はおおむね20歳ですが、高校在学中も9.3%。これは同級生より遅れて入学したか、定時制や通信制で4年以上通学している、あるいは留年が考えられます。学校に通っていない51.9%の中には働いている者も含まれる点に注意。

全体として、就職した人は非正規雇用の割合が高い一方、大学など高等教育機関で学んでいる者も少なくはないという結果でした。また、就職も就学もしていないニートと思われる層も18%とかなり多めになっています。

マイナスの影響は「感じていない人」が多い

不登校による人生へのマイナスの影響
出典:「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)(p.46)

20歳時点で、中学での不登校経験がマイナスになったかどうかの回答です。社会的に不登校は「よくないこと」と見られがちですが、人生にマイナスに作用したと捉える人は24%に留まっています。

これとは別に「不登校による不利益・不当な扱いを受けたか」という質問項目もあるのですが、「おおいにあった」は6.7%、「少しはあった」が25.2%、「まったくなかった」が68.1%となっており、本人の認識として、世間で思われているほど不登校経験はマイナスにならないようです。

「学校に通っておけばよかった」も約4割いる

中学時代の不登校に対する後悔
出典:「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)(p.23)

20歳時点で中学生の頃の不登校を後悔しているのかどうか。およそ4割が「学校に行けばよかった」と後悔しています。

当サイト「不登校イッツオールライト」は、基本的に不登校を肯定しており、「無理に学校に行かせる必要はない」という立場ですが、生徒の状態によっては登校するよう促す方がいい場合もあるのでしょう。普通の学校生活を送れず、文化祭・体育祭といったイベントの思い出がないことに寂しさを覚える人もいるようです。

とはいえ、不登校経験を容認・肯定している人も多く、不登校のあり方・捉え方は十人十色。この結果だけから「学校に行かせるべき」「行かせるべきでない」といった結論は出せません。

調査結果を眺めて思うこと

読書をはじめ、勉強の重要性が増している
  • 中学卒業後、就職も進学もしなかった人が8%
  • 20歳時点で仕事も学業もしていない人が18%
  • 働いていても非正規雇用が多く、全体の33%

こうした点を見ると、全体として社会的に不利な状況に置かれる場合が多いのかもと思われます。

ただ、不登校となる理由の3割は「勉強についていけないから」です。不登校だったから、というより学力不足がこうした結果につながっている可能性もあります。データは詳細ですが、その捉え方には注意が必要です。

やはり、ひとつ言えるのは不登校の状態でも学力養成だけは怠ってはいけない、ということ。

中学生のときに不登校でも、その先、高校や大学への進学がありえます。なので、そこに備えた勉強をしているかどうかで選択肢が変わってくる。学校に行けばよかったと後悔している人が4割いますが、この中には「勉強しておけばよかった」という思いの人もかなり多いのではないでしょうか。

当サイトの記事を読んでいただいている方にはお分かりの通り、学校には行かずとも勉強する方法はいくらでもあります。教育支援センターやフリースクールに行ってもいいし、通信教材で自宅学習してもいいのです。

不登校自体はもはや珍しいことではないし、出席が少なくても進学先はいくらでもあります。が、基礎学力がないとさまざまな面で不利益を被ることになります。私としては、たとえ不登校であっても最低限の勉強だけはやらせておいて欲しいと思うのです。