子供が小学校や中学校、高校に通えなくなったとき、ほかに通える施設としてはどんなものがあるのでしょうか? 「普通に学校に通う。そうでなきゃ家にいる」という不幸な二者択一に陥らないため、他の選択肢も見据えておきましょう。
後半では、一例として埼玉県熊谷市でそういった代替施設を調べてみたプロセスをご紹介します。
目次
不登校を受け入れる施設は複数ある
ある日、わが子が学校に行けなくなる。朝、起きてこなくなる。
「はやく起きな。学校に遅刻するよ」
それから始まる親子のバトル。やがて月日が経つにつれ、遅刻欠席が増えていき、本格的な不登校へ。気づけば勉強も遅れに遅れ、親の側にも諦めの心がめばえてきて……。
と、こんな状態に陥っているご家庭も多いかもしれません。しかし、これは不幸すぎます。中には5年10年と不登校・ひきこもり状態になっているのに、何のサポートも支援も利用しないで年月を重ねてしまう方もいるのだとか。悲しいことです。
こうした事態に至る理由のひとつとして、「学校に普通に行くか、不登校のままでいるか」という、0か100かの思考法があると思います。不登校を続けるか、または元どおり学校へ行くか。これは、これまで普通に過ごしてきた方にとっては「常識」かもしれませんが、しかし、日本社会にはすでに他の選択肢も豊富に用意されています。
ただ無駄に不登校期間を長引かせるよりも、関係各所への相談と積極的な情報収集を行い、子供にとってよりベターな生活を模索・提案してあげる方が建設的です。
では、いわゆる普通の小学校・中学校・高校以外にどのような施設・教育機関があるのかを見ていきましょう。
教育支援センター(旧・適応指導教室)
まずは教育支援センターと呼ばれるものがあります(適応指導教室から改名)。学校生活への復帰を目的として設置され、いわゆる居場所としての役割もありつつ、教育も行っている施設です。
教育支援センターは全国の6割の自治体(ほとんどが市町村)に設置されており、運営はほぼすべて教育委員会が行っています。職員は退職した教師などで、8割が教員免許を保持しています。
受け入れは主に小・中学生で、現在のところ全国で1万5000人ほどが通学。小・中学生の不登校が15万人ほどですから、利用率は1割と低めですね。
教育支援センターは学校への復帰を目的としているところが多いためか、学校への復帰率は中1で26.9%、中2で33.3%、中3で53.1%とかなり高くなっています。あくまで一時的な支援施設という色合いがつよく、ずっとここで学びつけるという性質のものではありません。センターを離れたあと、中学校卒業後の進路としては全日制高校が36.8%、定時制高校が24.7%、通信制高校が23.2%とほぼ85%が高校進学となっています。
公共の機関となるため学校との連携もできていて頼りになる。というイメージもありますが、お役所仕事で対応が遅いため、「頼りにならない」と感じる場合もあるようです。
適応指導教室は市町村の教育委員会が運営しているため、職員は「公立校の先生」だった。(中略)それにしても、すぐにでも通いたいという申し出に対し、2週間以上面談ができないあのお役所仕事ぶりは、今でもどうかと思う。
出典:小林薫『娘が不登校になりました。「うちの子は関係ない」と思ってた (本当にあった笑える話)』(p.34)
教育支援センターの探し方
教育支援センターは教育委員会が運営しており、学校との連携も取れていることが多いので、まずは学校の担任などに相談してみるとよいでしょう。
他には自治体の教育相談窓口を利用する方法もあります。お住まいの自治体ホームページに「子育て・教育」といったカテゴリがあり、そこに電話やメールでの相談を受け付けているはずです。
それからもちろん、Google検索でも発見できます。「教育支援センター 〇〇市」など、地名を入れて検索すると場所や問い合わせ先が見つかります。
フリースクール
フリースクールはNPOや企業など民間で運営されている団体で、全国に400から500団体が存在しています。不登校の児童生徒の受け入れ先としてこちらもよく知られています。
カラーや目的はさまざまで、他に行き場のない子の居場所として開放されているところから教育に力を入れているところ、1〜5人の小規模なところから20人以上の大人数のところまであります。
元不登校の方や親御さんの体験談などを読むと、フリースクールでふたたび人間関係を回復できた、子供の個性を認めてもらえたと、好意的に捉えている方をよく見かけます。
参考:うちの子は「問題児」なの?涙が溢れたフリースクールでの出来事
学習に関しては「カリキュラムを決めていない」というフリースクールが50.3%あり、学習教材も教科書と市販のものが多く、全体としては学習支援に重きを置いていない印象です。スクールへの出席が在籍校への出席として認めらるかどうかはまちまちですので、確認が必要です。
こちらは公的な機関ではないので、通うにあたり費用が発生します。
月会費:平均3万3000円
入会金:平均5万3000円
決してかるい負担ではないですが、多くの施設が10名以下の生徒しかいないことを考えると決して高くはないでしょう。
「フリースクール」という名前はそれなりに耳にしますが、実際に利用しているのは不登校児童生徒のうちたった2〜3%しかいません。
フリースクールの中にはメディアで取り上げられる話題のものも生まれていて、埼玉だと松実高等学園中等部があり、こちらは中学校出席扱いとなり上の高校進学にもダイレクトに接続しています。また、2019年4月には角川ドワンゴ学園N高等学校にN中等部が誕生します。既存の学校には合わない子供たちも、だんだんと学びやすい状況が整ってきています。
通信制高校・サポート校
上記の教育支援センターとフリースクールは、メインとなる対象者が小・中学生でした。では、高校生の不登校だとどういった受け入れ先があるのでしょうか。
主なものとして通信制高校への転入・編入があります。全日制の高校からそのまま移ったり、一度退学してから入学することもできます。通信制高校は法律上も「高等学校」と認められているため、レポートの提出・スクーリング(出席)・テストなどをこなすことで高卒の経歴を持つことができます。
一方、サポート校は学習塾や予備校が運営している無認可の学校となっています。こちらは、扱いとしては民間の塾と変わりなく、正式な意味での「学校」ではありません。ただし、大半のサポート校は通信制高校と提携しているので、サポート校で学習の実質的な支援を受けつつ、通信制高校の卒業資格をめざすというかたちになります。
通信制高校・サポート校の探し方
こちらは子供の学年と住んでいる地域から一括検索で資料請求ができるサイトがあるので、これを利用すると便利です。
その他の教育機関
以上のほかにも、地域によって不登校の児童生徒が通える教育機関が用意されている場合もあります。
既存の学校教育とはちがう哲学を持って運営されているオルタナティブスクール、東京都が中学不登校者・高校中退者向けに開校した単位制のチャレンジスクール、また、こちらも東京が開校している全日制のエンカレッジスクール、神奈川県がやっているクリエイティブスクールなど。
ここ20数年の不登校の増加を受けてか、都道府県レベルでも特色ある高校が次々に生まれていますので、まずは情報を集めることが必須です。
埼玉県熊谷市で不登校の受け入れ先を探してみた
不登校の問題がクロースアップされてきてるとはいえ、受け入れ先の機関の情報は積極的に調べないと入ってこないものです。公立校と近い教育支援センターの存在さえ、通常はあまり知られていないのではないでしょうか。
そこで、以下ではこんな条件を想定して情報収集をしてみました。
- 子供が中2で不登校
- 住んでいる地域は埼玉県熊谷市
では、ひとつのケーススタディとして参考にしてください。
熊谷市周辺にて、家庭教師の生徒さんを募集します【個人契約】
(オンラインツールを活用した家庭教師をしています)
公的な教育相談窓口を探す
まずは学校の先生、主として担任の教師に相談というのが順当ですが、それ以外の窓口も確保しておきたいものです。「熊谷市 教育相談」で検索してみたところ、このような相談先が見つかりました。
教育相談についてご案内します。
http://www.city.kumagaya.lg.jp/kosodate/kosodatesoudan/kyoikusoudann.html
幼児、児童、生徒の心身の健全な成長を図るため、各種の教育上の問題について相談に応じています。教育相談の対象は、幼児、児童、生徒とその保護者です。
教育相談の内容は、主に、発達の遅れ、就学及び生活習慣、対人関係、しつけ、学習、進路などの悩みや不安についてです。教育相談については、電話での相談と面接での相談を実施しており、教育研究所の指導主事及び教育相談指導員が相談に応じています。
また、不登校に関して、相談やスムーズに学校復帰できるよう支援する「さくら教室」を開設しています。
ここから、電話やメールで不登校全般について相談できることがわかりました。と同時に、「さくら教室」という支援窓口らしきものを知ることもできました。
さくら教室(学校適応指導教室)を調べる
今度はGoogleで「熊谷 さくら教室」で検索してみました。すると、これが学校適応指導教室であることがわかり、その住所まで確認できました。
Googleマップを見ると、さくら教室は熊谷市立文化センターの中にあり、熊谷駅から徒歩4分のところだとわかります。
さくら教室自体のオリジナルサイトはどうやらなさそうですが、不登校情報センターというサイトの個別ページにこう書かれていました。
通級する児童・生徒の年齢 | 小学生(1~6年生)中学生 |
---|---|
通級できる児童・生徒の居住自治体 | 熊谷市 |
通級できる児童・生徒の状態 | 不登校 |
呼びかけ・留意 | 通級は保護者の責任で行うこと。 学習は自学自習で行うこと。 他の通級する児童・生徒と協調して小集団での活動に参加すること。 *学校長から保護者及び児童・生徒への紹介。 |
不登校の子の居場所としては機能していそうですが、「学習は自学自習」とあるので、勉強面でのサポートはあまり期待できないかもしれません。
熊谷市のフリースクールを探す
フリースクールは全国で400から500しかありません。1都道府県あたり10程度ですので数が少なく、近場で探すのは苦労します。
「フリースクール 熊谷」で検索をしてみてもわかりやすい情報はすぐには得られませんでした。熊谷キャンパスは存在しないのにトライ式などがヒットしてしまったり、サポート校のようなずれた情報が出てきてしまいます。フリースクール自体の情報発信力もあまりないのかもしれません。
不登校ナビ、LITALICO発達ナビ、不登校.INFOなどのまとめ系サイトもありますが、最新情報をうまく網羅しているサイトはないので、自力で探していくしかありません。ひとつ発見できたのはこちら。
1999年に開校、本部は東京都豊島区雑司が谷にあり、「個性教育」を重視しているとのこと。フレネ教育とはフランス発の教育方法のようです。ただし、熊谷に通えるスペースがあるのかどうか曖昧なので、検討するなら要問い合わせとなります。
こちら以外で通えるフリースクールとなると大宮・さいたま市・春日部市といったかなり離れた場所を考えなければなりません。通学に時間と費用をかけてそこまで行くか、「さくら教室」に通いつつ家庭学習でフォローをするかは考えどころですね。
大きな市町村であればいくつかのフリースクールが見つかり、選ぶこともできるでしょう。しかし、小さな自治体となると情報自体が見つけにくいので、根気が必要となります。
熊谷市での調査結果のまとめ
さすが、教育委員会が運営する適応指導教室「さくら教室」はすぐに発見することができました。まずはこちらが活用すべき第一候補となるでしょう。
フリースクールについては2019年現在どうやら熊谷近郊にはないので、お子さんの希望や費用面を考えてやや遠くへの通学を検討することになります。逆に、さくら教室で支援を受けつつ再登校をめざすか、そこはあまり期待せず、家庭学習で勉強をさせつつ高校進学を見据えるというのが現実的な選択肢となりそうです。
再登校か不登校かだけではない
不登校のお子さんが通える教育機関についてお伝えしました。教育委員会が設置している教育支援センター(適応指導教室)や民間のフリースクール、通信制高校の中等部など、いくつかの選択肢を見つけることができました。
しかし、いろいろな選択肢が実際にはあるのに、どれも利用率は非常に低めです。多くのお子さんがただ不登校のまま家にこもり、人生経験と学習の機会を逃している現状は非常に残念。
「再登校か不登校か」という二者択一も狭い考え方は、子供の貴重な学習機会を奪ってしまうことにもなりかねません。もしお子さんが学校に行けない状況が続いているなら、ぜひとも早い段階で別の選択肢を検討していただきたいものです。
【参考リンク集】