よくセットで語られる不登校とひきこもり。なんとなく、「不登校だと将来ひきこもりになる」とか「ひきこもりの多くは元不登校」というイメージを持っている方も多いのでは?
今回は、国の大規模な調査結果をもとに、ひきこもりたちの過去の経緯を見てみてみましょう。
目次
15〜39歳のひきこもり49人の過去
今回参照したのはこちら。
タイトルからわかりにくいですが、実質的に「若年層ひきこもり全国調査」と言える内容です。全国の15〜39歳の若者5000人を対象としたアンケート調査です。
結果、ひきこもりとされる者は49人でした。有効回答を分母とすると1.57%です。15〜39歳人口は3,445万人なので、この年代のひきこもり人口は54.1万人と推計されます。
49人というのは実態調査のサンプルとしては非常に少ない。なので、以下にご紹介する情報はその少ないサンプルに基づくものとして参考にしてください。
また、この調査では「ひきこもりを共感・理解し、ともすると閉じこもりたいと思うことがある人たち」が「ひきこもり親和群」として抽出されています。
▼ ▼ ▼
小中学校で不登校を経験したのは30.6%
サンプルが少ないですが、人数としては49人中15人だと考えられます。やはり、現在ひきこもっている人の不登校経験率はそうでない人に比べてかなり高くなっていますね。
しかし、逆に言えばひきこもりであっても7割は不登校でなかったということ。イメージされるほど強い相関関係はなさそうです。
学校の勉強についていけなかったのは36.7%
こちらは全体的に高めの数値ですが、ひきこもりで勉強についていけなかったのは36.7%、49人中の18人です。不登校経験よりこちらの方がインパクトが大きい気がします。
ひきこもりというと対人関係の問題ばかりクローズアップされますが、学業面でのつまづきもかなり影響していそうです。
ひきこもりの学歴は過半数が中卒か高卒
一般群は中卒・高卒があわせて36.7%に対し、ひきこもりは55.1%と半数以上になっています。また、一般だと大卒が34.8%なのに対し、ひきこもりで大卒は22.4%です。学歴には顕著な差が見られますね。
ただし、ひきこもり群でも大卒の割合は決して少なくはなく、大学まで卒業すれば大丈夫とも言えなさそうです。
ひきこもった年齢は20歳前後が多い
ひきこもり始めた年齢としては、最多が20〜24歳で34.7%。10代後半もかなり多くなっています。おそらく、社会に出始めるタイミングで不適応を生じる人が多いのでしょう。
ただし、30代からのひきこもりも決して少なくはありません。
ひきこもりのきっかけは千差万別
ご覧のように、ひきこもったきっかけはさまざま。どこかに集中しているわけではありません。「その他」には「無気力」や「特に理由はない」といった曖昧なものが多くなっています。
「原因はこれだ!」と特定できないところがひきこもり問題の厄介なところです。
不登校の延長でひきこもりは49人中9人のみ
いかがだったでしょうか? 不登校とひきこもり、一般的なイメージに比べると関係は強くないという印象を持たれたのではないでしょうか。
- ひきこもりの不登校経験率が30.6%
- 不登校がきっかけでひきこもった人は49人中9人
たしかに一般群と比べると多いですが、「ひきこもりは不登校の延長」というイメージは正しくないことがわかると思います。
また、今回ご紹介した中で注目すべきは学生時代の勉強について。
ひきこもり群では「学校の勉強についていけなかった」が36.7%、つまり、49人中18人です。一般群の倍以上の数字となっています。
推測ですが、小中高のどこかの段階で勉強につまづいてしまい、その結果として無力感・劣等感を持ってしまう。それが尾を引いて社会への不適応を引き起こす。そんなマイナスのスパイラルの陥っているのかもしれません。
子供の頃からのしっかりした基礎学力の養成。ここが重要だと思います。
若者の生活に関する調査報告書 平成28年9月 内閣府
(今回参照した15〜39歳のひきこもりに関する調査)
生活状況に関する調査 (平成30年度) 内閣府
(40〜64歳の中高年ひきこもりに関する調査)
ひきこもりの実態に関する アンケート調査報告書 KHJ 全国ひきこもり家族会連合会 2018
(ひきこもり経験者85名と家族544名を対象とした実態調査)