学校までは何とか行けるけど、教室には入れないから保健室で過ごす、いわゆる保健室登校。不登校予備軍の児童・生徒の選択肢として検討されることがあります。

この「不登校以上、教室登校未満」とも言える保健室登校をしている子供たち、果たしてどれくらいいるのか? どんなきっかけ・経緯で保健室登校になったのか? 出席のカウントや勉強の実態などをお伝えします。

完全な不登校は避けたいけど、教室に入るのは難しい。そんなお子さんにとっては一時的な「居場所」として役立つかもしれません。

保健室登校とは? 実態を示すデータ

まず、実態確認をしておきましょう。3つのデータをご紹介します。

1:保健室登校は学校全体の3分の1で実施

最近行われた調査の結果によると、小中高を含め、全体の3分の1で保健室登校が行われていました

また、一つの学校にいる保健室登校の子の数は、1年間で2〜3人となっています。

いかがでしょう? 思ったより数が少ないと感じませんか。3分の2の学校では保健室登校はなく、平均人数もかなり少ないのです。これは、保健室以外の別室登校(図書室・職員室・校長室など)をしている可能性もありますが、にしても、思ったより少ない。

さらに、保健室登校を開始した学年は中1・高1で多く、季節としては夏休み明けの9月が好発時期となっています。この点は不登校や児童生徒の自殺増加のタイミングともぴったり一致していますね。

なお、詳しい情報はこちらの電子版冊子で読むことができます。

参考:平成28年度調査結果|保健室利用状況に関する調査報告書

2:元不登校中3の保健室利用は24.2%

かつて不登校だった人を対象に行った文科省の調査では、こんな結果が出ています。

中3のとき、「学校の養護教諭(保健室の先生)」に相談していた人は24.2%である

これは、相談先としてスクールカウンセラーなどの相談員、担任の先生、病院・診療所に次いで4番目に多い数字です。身体的な不調で相談していた子も含まれているでしょうが、この24.2%のうち何割かは保健室登校だったと想像できます。

出典:「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書 p.15

3:保健室登校は「不登校傾向」の一種

ここで確認。保健室登校は、正式な「不登校」としてはカウントされていません。現在、小中学校全体で14万人ほどが不登校と言われていますが、これは「年間30日以上欠席」の子供の数。保健室登校は「登校」扱いなのです。

そのため、校長先生が「わが校には不登校はひとりもいません」と言ってたのに、実は保健室登校の子がいた、なんてことも……。

参考:小林薫『娘が不登校になりました。「うちの子は関係ない」と思ってた (本当にあった笑える話)』Kindle版

一方で、日本財団が行った調査では保健室登校も含めた不登校予備軍・不登校傾向の子の数が調査されており、その数33万人。全小中学生の10.2%にあたります。

元データ:不登校傾向にある子どもの実態調査 | 日本財団

授業参加・保健室登校・不登校。これらはそれぞれ別個のものではなく、グラデーションを描いていると考えられます。

保健室登校の始まりと生活・学習の実態

学校の保健室
Douglas P. Perkins [CC BY 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/3.0)]

不登校状態から保健室登校に、あるいは、通常の授業参加から保健室登校にはどういった経緯でなるのか? なった場合の1日の生活や学習形態はどうなるのでしょうか?

周囲に事例がないとイメージしづらいと思いますので、調べた結果をお伝えします。

保健室登校になるには担任への相談から

いくつもの事例を見ていきますと、保健室登校のスタートは保護者と担任、その他学校側との相談の末に、というパターンが一般的です。

正式に「保健室登校」というコースが学校にあるわけではありませんから、「最初は保健室だけでも」と通学のきっかけにしたり、とにかく出席日数だけでも増やしたい場合に選択されています。

もっとも、保健室登校が認められるかは学校によって違います。保健室の先生だって、理解者になってくれる人もいれば協力的でない人もいる。いろんな面で学校により対応が異なります。

もし本人が保健室登校をしたければ、まずお母さんお父さんに相談、ご両親は担任の先生に相談というのが通常の流れになるでしょう。

1日のスケジュールは「遅く行って早く帰る」

朝、登校のタイミングは他の子供たちより30分から1時間ほど遅くすることが多いようです。

不登校傾向の子供はしばしば起立性調節障害などで朝が苦手。さらに、他の子との接触にストレスを感じていますので、タイミングをずらすことで登校のハードルが下がるのです。

保健室では養護教諭の先生と話をしたり、本を読んだり学習プリントをこなすことで過ごすパターンが多くなっています。友達が来て楽しくおしゃべりできることもあれば、他の生徒や先生が来て居心地わるい思いをする、なんてことも。

帰宅は昼前だったりそのあとだったりとまちまち。いずれにしろ、帰宅時にも他の生徒とバッティングしないように時間帯をずらす子が多いみたいです。

勉強は読書やプリントなど

保健室登校の最大の問題点は学習です。当然、授業を受けていないわけですから、勉強には遅れが出てしまいます。

中には先生が学習プリントを持ってきてくれたりちょっとしたサポートをしてくれることもありますが、授業に出ないことがハンディキャップになることは否めません。

もし保健室登校をするとなれば、学習については不登校の場合と同じく、ご家庭での対応が必要となります。

また、保健室登校は先ほども書いたように「出席扱い」となりますが、授業を受けたりテストを受けたりしなければ成績が付かない(または悪くなる)ことがあります。その場合には無理して「普通に登校していた」という体裁を保つより、不登校中学生に対応してくれる高校への進学をめざす方がいいかもしれません。

保健室登校は「ずるい」? メリットは最大限利用してやれ!

それはどこの誰のことば?

ネットの海をサーフィンしてると、よく目に入るのがこんな意見。

  • 「保健室登校はずるい」
  • 「保健室登校なんて甘えだ」
  • 「教室に行って授業を受けるのは学生の義務だ」

とにかく、”普通に”教室へ行ってみんなと一緒に授業を受けなきゃいけないんだ。それを避けるのはずるいんだ甘えてるんだ逃げてるんだコノヤロー、という感情的な意見が目立ちます。

たしかに、保健室登校は他の子とは違う行動でしょう。

しかし、それの何が悪いのでしょうか? それ相応の事情があるのなら、いいではないですか。

保健室登校に非難の矛先を向ける人は、たぶん、強く強く、こう考えているのです。

  • 毎日学校の教室に行って授業を受けるのは義務
  • そこから一人だけ抜け出すのは許されない

こういった考えにコッチンコッチンに凝り固まり、侵すべからざるルールのように信じ込んでしまってる。まるでそれが、罰則付きの法律かのように。

しかも、おそらく、「自分もイヤだったけど、がんばって普通に登校したんだぞ」という思いがある。「自分もがまんしたんだから、他の人が逃げるのは許せない」と、こう考えているのでしょう。

奴隷のような心理です。こんな人が、世の中にはけっこうたくさんいるみたい。

ですが、そんなことは知ったこっちゃないのです。

事実、保健室登校はかなりの学校で認められています。メリットも豊富。

  • 不登校と違って出席扱いになる
  • 保健の先生とコミュニケーションを持てる
  • 学校との接触を保てる
  • 給食が食べられる

これを、うまく利用してやればいいのです。遠慮はいらない。

教育は、各家庭・各個人のオーダーメイドで行う時代になってきました。学校は「利用すべき一つのツール」と捉えればよいのです。不登校も保健室登校も、イッツオールライトでございます。


ところで、これを読んでいるあなたはもしや中学生? 高校生? もしそうなら、「甘えだ」とか「ずるいぞ」と煽ってくる人々にご用心。子供からすると、そんな人が社会常識を身につけた「厳しくてちゃんとした大人」に見えちゃったりするかもしれない。しかし、騙されてはいけません。

これからは、つらいのにがまんして教室へ行く必要はない。全然、ない。批判してくる意見には「うるせぇ」と一言つぶやき、あとは永久に無視しましょう。

最後に

保健室登校の基本的なデータとその実態などをお伝えしました。

とはいえ、曖昧だし漠然とした内容だったことは否定できません。というのも、保健室登校は全国一律の制度みたいなものでなく、各学校によってかなり対応が違うから。なかなか、統一的でだれにでも当てはまる情報は出せないのです。

もし保健室登校をご希望なら、まずは担任の先生をはじめとした学校側に打診してみてください。そこは、今の状況でベストな「居場所」になるかもしれません。