わが子が不登校になったとき、気がかりなのが出席日数のこと。
「このままだと中学校を卒業できないんじゃないか?」
「高校受験で不利になってくるんじゃないか?」
こんな先々のことも心配になってきます。しかし、正確な情報を知っておけば心配には及びません。
目次
中学校は入学すれば1日も出席せずに卒業できる
結論はこれです。
現在、中学校は入学さえしていれば、たとえ出席日数0日でも卒業できます。
平日の授業はもちろん、定期テストや行事、入学式や卒業式さえ出なくても卒業できます。かつては「中学校中退」ということもありえたのですが、2019年現在、こういうことはありえません。
「1日も通わないのに卒業できちゃうって、じゃあ卒業って何?」という気もしますが、日本社会としてはこうなっているんですね。一時期、大阪で橋下元市長が「中学校でも留年できるようにしよう」と言っていましたが、都構想といっしょにどこかへ消えてしまいました。
例外として、家庭の事情で学校に手続きをしないまま引越し(夜逃げ)をして学校に在籍すらできず、小学校・中学校の卒業資格を得られないということもあります。
ですが、この場合でも「夜間中学」や「中学卒業程度認定試験」といった救済措置が用意されています。
参考:ひらがなも書けない若者たち ~見過ごされてきた“学びの貧困”~ – NHK クローズアップ現代+
「このままでは卒業できません」はウソ
中学校によっては不登校の子や保護者に対し、「出席日数が足りないと卒業できない」と告げる教員もいるようです。中には校長先生がこのように言うこともあるとか。
しかし、これはウソです。中学校での留年(原級措置)は、現実的にはありえません。
学校側や担任教師がそのように言うのは、行き渋る生徒に対する激励なのでしょう。悪く言えば「脅し」です。真に受ける必要はありません。
ひょっとしたら、大人も昔そのように言われ、今でも信じてしまっている例もあるかもしれませんね。
義務教育だから卒業できる? 中学校の卒業要件
では、なぜ1日も出席せずに中学を卒業できるのでしょうか。「単位が足りない」とか、「成績表が付けられない」といったことで卒業要件を満たせないということはないのでしょうか。
これに関し、ネットではよく「義務教育だから卒業できる」と言う方がいます。ですが、この正確な意味をご存知でしょうか。
中学校の卒業認定については学校教育法自体に規定はなく、その具体的な運用を決めた学校教育法施行規則の中に書かれています(なので、厳密に言うと「法律で決まってる」は間違い)。
小学校において、各学年の課程の修了又は卒業を認めるに当たつては、児童の平素の成績を評価して、これを定めなければならない。
学校教育法施行規則 第57条
第四十一条から第四十九条まで、第五十条第二項、第五十四条から第六十八条までの規定は、中学校に準用する。
学校教育法施行規則 第79条
まだ漠然としていますね。さらに詳しい規定は各市町村の「小中学校管理規則」に書かれています。
ここではさいたま市のものを引用しますが、気になる方はお住まいの地域名で「〇〇市 小中学校管理規則」でGoogle検索してみてください。
校長は、児童生徒の平素の成績を評価して、その学年の課程の修了又は卒業を認めることができないと判定したときは、当該児童生徒を原学年に留め置くことができる。
さいたま市立小・中学校管理規則 第7条
「出席日数が〇〇日以上で卒業」とか「単位が〇〇以上で卒業」といった決まりはありません。小中学校の進級・卒業は校長の裁量で決まります。
この条文だと校長が自分の判断で児童生徒を留年させられそうですし、そのような権限を持っているのは事実ですが、現実的にそういうケースはないと考えて大丈夫です。
×「卒業には出席〇〇日以上が必要」
×「卒業には単位が〇〇以上ないといけない」
○「卒業は校長の裁量で決める(現実的に留年はない)」
出席日数が少ないと内申点で不利?
出席日数がゼロでも、小中学校は卒業できます。しかし、出席日数が少ないと内申書(調査書)がわるくなり、高校進学で不利になるかも、という不安はありますよね。
たしかに、これはその通りです。出席状況がわるいと内申書に記載されますので、受験する高校によっては不利に働くことは否めません。
しかし、一昔前と違い、現在は中学で不登校だったのを前提に入試を行なっている高校も増えています。多少は選択肢が狭まるかもしれませんが、生徒の状況を理解した上で受け入れてくれる高校を探した方がよいでしょう。
基本的に「出席日数」を問わない高校入試ができる体制は年々整っています。ボクが担当をする東京都と神奈川県においては、不登校状態のまま「出席日数」だけをカウントしてもらうよりも、「不登校なので出席日数はカウントしない」というシステムを利用した入試の方がかえって高校選びにおいても実際の進学においても有利になるケースが多いです。「正直に」受験をすることができますので精神的な負担も軽減されます。
出典:阿部伸一『不登校は天才の卵 学校に行かない7つの選択肢』宝島社,p.159-160
近年、中学生の不登校は急激に増加しており、それを受けて高校入試も変化しています。「出席日数が少ないとたいへんなことになる」というのは昔の感覚が残っていることによる、余計な心配です。
学校以外で出席を認めてもらえる施設
普通に学校に行って授業を受ける以外にも、出席を認めてもらう方法があります。たとえば、中学生で出席扱いとなった施設の例と人数をご紹介しましょう。
区分 | 人数 |
1:教育支援センター (適応指導教室) | 1万1731 |
2:教育委員会及び教育センター等 教育委員会所管の機関 | 2426 |
3:児童相談所, 福祉事務所 | 914 |
4:保健所,精神保健福祉セン ター | 37 |
5:病院,診療所 | 703 |
6:民間団体,民間施設 | 1129 |
7:上記以外の機関等 | 391 |
出典:平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について,p.93
不登校の中学生は、現在11万人ほど。と考えると、教育支援センターの利用者はかなり多いのがわかります。また、この表にはありませんが、保健室登校で出席となっている例もあります。
ただし、高校受験のために何とかして出席日数を稼ごうという考え方には注意が必要です。
たしかに教育支援センターや一部フリースクールに通うことで「出席扱い」にはなりますが、不登校だったことは調査書によって高校側に伝わります。不登校を隠して受験なんて無理です。
ちなみにこちらの方の記事では、そんな失敗談が語られています。
参考:不登校がバレないと思ってた!高校受験の面接① | 不登校の息子(現在高校2年目)と能天気ママの日記
出席日数なんて気にしなくていい
結論は最初に書いた通りです。小中学校は出席日数ゼロでも卒業できる。
おまけに、最近では中学で不登校だった場合でも対応してくれる高校が増えていますから、悲観的になる必要は何もありません。無理をして出席日数を稼いで受験するより、等身大のお子さんを受け入れてくれる学校を探した方が何億倍もいい。お子さんに合った学校は必ず見つかります。
なお、出席が少なくても不利にならない進路についてはまた別の記事でご紹介しますので、そちらも合わせてごらんください。