高校生の頃、私は微妙に不登校でした。「微妙に」というのは、完全に行かないわけでもないし、休まず通うわけでもない、中途半端な状態だったから。当時は知らなかった言葉ですが、五月雨(さみだれ)登校というらしい。
現在、不登校の高校生は全国に5万人、全体の1.5%います。私と同じく、不登校気味の人も多いに違いない。
そんな人たちにとって、私の経験談と情報が少しでも参考になれば幸いです。
高校時代は勝手にフレックス登校かつ週休3日
学校をちょくちょく休むようになったのは2年生から。その経緯や理由については他の記事に譲りますが、とにかく、私は頻繁に休むようになりました。
中学までは不登校の経験もなく、学校がきらいでもなかったので、あれははじめての経験……。
第一志望の高校に進んで1年、気づけば遅刻は当たり前、朝のホームルームはガン無視で、2限目3限目からひょっこり顔を出すという勝手なフレックス登校、金曜や月曜は丸一日休んで勝手に週休3日制を作り上げる、そんな日々。
よく覚えているのは、独特の登校ルーティーンです。
他のクラスメイトはみんな同じ時間に電車に乗るか、自転車かで、始業前に学校に到着していたのでしょう。「やっべ、遅刻しちまう!」と慌てる生徒もいれば、「急げー! 朝のホームルームはじまるぞー」と急かす体育教師なんてのもいたかもしれない。
で、教室に全員漏れなくそろって1日がスタート!
……とはなりません。なぜなら、私はそのとき、まだ駅に向かう途中だったから。
愛車の原付、スズキのレッツ2にまたがった私は甲高い2ストのエンジン音を響かせて、田舎の家からJR高崎線の駅へとひた走る。駐輪場へ原付をとめたら陸橋を超え、改札のある反対側へ。それから、空席ばかりの車両にゆられてようやく高校の最寄駅へと到着します。
さて、ここからが私の腕の見せ所。いかに目立たず教室へ入るかが試されます。
何の計画性もなく学校へ向かっては、1限か2限の真っ最中にあたってしまいます。廊下を歩けば他のクラスの教師や生徒の視線を浴びて、自分の教室でも「あ、今ごろ清水が来たぞ」と悪目立ちして、授業の邪魔になってしまう。それは恥ずかしいし申し訳ない。
だから、やみくもに直行はせず、まずは通学路から離れたローソンで一時待機。そこでジャンプなどを立ち読みしつつ、胸ポケットから学生手帳を取り出して時間割を確認します。
「現在時刻は午前10時半。すぐに行くと7分でつくから到着は10:37になる。2限目の終了は10:50だから、終わり際にひっかかってしまうぜ。よし、ここであと13分……いや、念のため15分待機だ」
そんな細かな計算を働かせ、ワンピースか何かを読みつつ、頃合いを見計らうのです。このあたりの時間の読みは経験がものを言うプロの世界。だれしもがマネできる芸当ではありません。
いざ予定時刻になったなら、ジャンプをラックに突っ込んで、急がず焦らず、さりとて遅くもなりすぎず、読み通りの時間に到着するようにローソンから歩いていく。校舎が見える。校門を抜けて、下駄箱で靴を履き替え、長い長い廊下へ。
すると、数分前に授業を終えた生徒たちがワイワイガヤガヤと教室で騒いでおり、廊下にも溢れでていて、私はその中の一モブキャラとして目立たず教室へたどり着くことができるのです。ミッション終了でございます。
もっとも、ときには何かの間違いで授業時間まっ最中に突入してしまったり、学年全体がどこかへ移動していてだれもおらず、ひとりぼっちの教室で白目をむいている、なんてこともあったのですが。
五月雨登校でも卒業できた
朝のホームルームは全無視し、1限もボイコット、ときには昼過ぎに登校。お天気がいい日は急遽登校を取りやめて、そのまま原付で群馬の山奥までツーリングに出かけちゃう。
なんて聞くと、あたかも自由な印象を持つかもしれませんが、いいことばかりではありません。
担任の教師にはときたま廊下で呼び止められて、皮肉めいた言葉をかけられていました。「飛び石連休を勝手に4連休にしたらだめだろ」とか「また社長出勤かい」とかなんとか。
「うっせーなセンコー。てめーには関係ねぇだろ。あの薬品くせぇ化学準備室にすっこんでやがれっ!」
なんて威勢のいいセリフは言えない私ですから、「はぁ」とつぶやき、焦点の合わない目をして、ブレザーのボタンをいじってやり過ごす、という戦法をとっていました。
そんな生活をしていれば、当然、成績はガタ落ちします。2年生の途中くらいからは授業に出てもほとんど意味がわからなくなりました。特に積み上げ型の理系科目はひどく、ちんぷんかんぷんです。
3年生になると学校の勉強自体を捨てていたので、テストの点数もひどいもの。最悪のケースで言うと、数学で「3点」をゲットしました。ミシュランガイドの格付けで「3つ星」と言えば世界に誇れる高評価ですが、いかんせん100点満点中の3点なので赤点もいいところ。
と、それだけならまだしも、出席日数もやばくなる。
いちばん危なかったのは3年生のときの世界史で、「あと1回でも休んだら単位を落とすとこだったぞ」と言われました。当時の私は「単位」という概念を知らなかったので、知らず知らずそんな瀬戸際まで行っていたのです。
けれど、最終的には中退もせず留年もせず、よくわからないうちに卒業となりました。
高校はどれくらい休むと留年になるのか
適当に遅刻・欠席を繰り返しつつも卒業となった私ですが、しかし、今思うともっと正確な情報を集めて登校計画(=欠席計画)を練ればよかったと思っています。
まず知っておくべきは、「単位」のこと。
小学校・中学校には単位という考え方はなく、進級も卒業も学校側のさじ加減で決まります。しかも、事実上はどれだけ休んでも留年になったり中退させられたりはしません。
一方、高校では単位を取らないと進級・卒業できない。
各教科につき、「この授業を1年間受けてテストで合格点を取れば〇〇単位あげますよ」と決まっている。高校生が授業を受けるということは、実は、この「単位」を集めることに他なりません。
高等学校学習指導要領(平成30年)の解説を見ると、こう書かれています。
学校においては,卒業までに修得させる単位数を定め,校長は,当該単位数を修得した者で,特別活動の成果がその目標からみて満足できると認められるものについて,高等学校の全課程の修了を認定するものとする。この場合,卒業までに修得させる単位数は,74単位以上とする。
出典:【総則編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 p.135
つまり、3年で74単位以上を取る必要がある。
さらに、単位取得にはおおむね授業全体で3分の2以上の出席が必要となります。3分の1以上休むとアウト。この裏ルールを知っておきましょう。
それから、他のルールもあるので、ここにまとめておきます。
【高校の卒業要件】
- 74単位以上の修得
- 通算3年間以上の修学
- 30時間以上の特別活動への参加
(※ 特別活動というのはホームルームや文化祭、修学旅行などで、あまり気にする必要はないでしょう。)
このルールを事前に知っておけば、当時からもっと計画的に学校を休むことができたのに、と思います。
ちなみに、大学も単位を取ることで卒業というシステムなのですが、こちらは入学早々に分厚い冊子をわたされ、自分で履修計画を作るように言われます。だいぶめんどくさいですが、単位の存在すら学生に知らせない高校よりもだいぶオープンだし良心的です。
五月雨登校は計画が大事
なぜ高校の単位のことを説明したかというと、これを知っておけばギリギリまで休めるからです。
私は世界史のみ最低限の出席で単位を取りましたが、逆に言うと、それ以外の教科はもっと休んでも大丈夫だったのです。3分の1までは休んでも大丈夫なので、そこを計算しておけばよかった。
それから、単位のことがわかると賢い休み方も見えてくる。
やみくもに五月雨登校をしていて、もし休みが同じ曜日に集中すると、特定の単位を落とすリスクが高まります。もともと授業日数の少ない美術とかを毎週休んでたら、たいへん危険。1教科でも落とすと卒業できませんから。
なので、五月雨登校にしても休む曜日をばらけさせる必要がある。遅刻するにしても、英語とか国語とか、なるべくコマ数が多い教科が1限2限のときをねらった方がいい。
このように考えていけば、あなたは当時の私の上をゆく、クレバーでスーパーな不登校高校生になれるでしょう。
……えっ? そんなに学校を休んでいいのかって? 開き直りじゃないかって?
もちろん、開き直りです。学校自体が古くさく非合理な体質を変えられないのですから、生徒側はその枠内で、制度のギリギリ内側のところで賢く立ち回らなければいけません。開き直ることこそ、大切なのです。
学校へ行くのは最低限。あとは好きなことをしていればいい。そのくらい、どっしりと構えていきましょう。
学ぶことは忘れずに
過去の不登校の回想と、高校の卒業要件についてお伝えしました。
高校の授業日数はだいたい年間200日。3分の1は休めるから、理論上は1年で134日行けばいいことになる。たいした日数じゃありません。基本、週1で休んで(週休3日)、たまに週2で休んでOKです(週休4日)。
これを知って開き直れば、いま不登校の人でもいくらか心が落ち着くのではないでしょうか。基本的には定時制・通信制への編入・転入がおすすめですが、今いる全日制を卒業しなければならない状況の人は、参考にしてください。
しかし、休んだとしても勉強は忘れずに。私のように学業を放棄してしまうと、高校卒業後に浪人となってゼロから勉強し直すことになります。学校の授業とテストを捨てたとしても、受験には個人的に備えておいた方がいい。
ということで、学校との付き合い方はドライに割り切り、自分の時間を優先させましょう。